
本記事のサマリ
急速な成長を続けるコンサルティング業界。その中でファームが果たすべき真の役割とは何か。今回、野村総合研究所(NRI)の宮嶋勇太郎氏をお迎えし、WorkX取締役の藤嶋と「これからのコンサルタントのキャリアと成長」をテーマに対談を行いました。トップファームと新進気鋭のファーム、両社の視点から切り込んでいます。 (対談実施日:2025年11月11日)
プロフィール

宮嶋 勇太郎 氏
株式会社野村総合研究所 システムコンサルティング事業開発室長
東京大学卒業後、NTT西日本を経て、野村総合研究所入社。
ITマネジメント領域を専門とするコンサルタントとして経験を積み、2015年度より経営企画課長として株主総会や取締役会の運営を担当、2018年度より現職。
現職では、システムコンサルティング事業本部の中期経営計画、事業計画を策定しその実行を推進する。更なる成長に向け、従来型のコンサルの枠を超えた事業への挑戦の中で、パートナーとの共創による新しい事業モデルを模索している。

藤嶋 祐作
株式会社WorkX 取締役CSO
東京大学大学院を修了後、スカイライトコンサルティング、プロジェクトカンパニーを経て、WorkXに参画。
プロジェクトカンパニーでは取締役として業容拡大に貢献し、同社の2021年東証マザーズ上場を経験。その後、複数のグループ会社において代表取締役、常務執行役員を並行管掌。
現職では執行役員を経て取締役に就任し、LeanXおよびSales事業を管掌。
新規サービスの戦略立案、マーケティング施策検討、システム導入/刷新、BPR/BPOなど、多様な領域/業界への支援に従事。
コンサルティング業界が担うのは「人財のインキュベーション」
藤嶋 本日はお時間をいただきありがとうございます。御社・弊社ともにコンサルティングファームということで、まずは広めのお話から入れればと思います。
ここ数年、コンサルティング業界はAIやDXの波に乗り、二桁成長を続けている数少ない業界の一つとなっていますが、宮嶋さんの視点から、現在の日本のコンサルティング業界はどのような役割を担っているとお考えか伺っても良いでしょうか。
宮嶋氏 ありがたいことに大きく成長している一方で、我々の業界が担うべき役割も大きくなっていると感じています。
成長を続けるコンサル業界が、これから社会に出る方々の就職先、ファーストキャリアとして人気を集めてきています。少子化の中、コンサル業界が、多くの将来有望な人財を囲ってしまうという構図です。
このような構図において、コンサルティングファームは、単に自社の成長だけを追い求めるのではなく、集まってくれた人財に「良い成長の場を提供する」という社会的な役割を担うべきである、と捉えています。
藤嶋 クライアントへの価値提供は前提にありますが、実際にコンサルティングファームのことを「成長の場」「登竜門」のように捉えている人は増えていると感じます。弊社も、メンバーには圧倒的な成長を求めています。
宮嶋氏 成長の先に、コンサルを卒業して様々な事業会社に転職していく方々もいるでしょう。我々は、そうした方々の成長を支える「人財のインキュベーション」とも言える役割を担っている業界だと認識しています。
パートナリングによる「機会提供」と「人財育成」
宮嶋氏 御社は積極的に若手含めた幅広い層に機会を提供されていて、しっかりと人財のインキュベーションを担っていこうとお考えなのかな、と見ています。
一方で、御社単独で生み出せる人財の成長機会には限界もあるでしょう。そこで、我々のような会社と組むことで、御社は人財の成長機会をさらに幅広く提供できるというメリットがあると考えています。
藤嶋 まさにおっしゃる通りです。弊社は「プロフェッショナル・エコノミー」と呼んでいるのですが、すなわち「信頼できる経済圏」を作りたいと考えています。
それは、パートナー企業や弊社サービス「ProConnect」に登録のある7,000名のフリーランスの方々も含めて、適材適所でクライアントの課題を解決する仕組みです。御社との取り組みは、そのビジョンを実現する上で中核となるものです。
一方、御社は国内有数のトップファームですが、どのようなお考えでパートナーシップを組まれているのでしょうか。
宮嶋氏 弊社は株式市場から、この成長業界の中でもさらなる成長を求められています。その中で、優秀な人財の確保は必須ですが、そう簡単にいくものではありません。
そこで、御社のような会社とパートナーシップを組むことで、優秀な人財を確保し事業を拡大することはもちろん、御社の人財に対してもより幅広い成長機会を提供できると考えています。株主に対する責任を果たすためにも、社会に対する責任を果たすためにも、信頼できるパートナーとの共創が非常に有効です。
「本質的に人を大切にしているか」
藤嶋 ありがたいことに、そのパートナーとして弊社を選んでいただいていますが、その理由を伺ってもよろしいでしょうか。
宮嶋氏 パートナーシップは、結局のところ、人と人との信頼関係に尽きると考えています。
御社で言えば、藤嶋さん他経営陣やパートナーシップの強化のために一緒に頑張ってくださってくれる方々の「価値観に共感できるから」という話です。その価値観とは「人を大切にする」ということです。
どれだけ優秀な個人でも、チームを大切にできない、チームのメンバーを大切にできない人は、どこかで必ず頭打ちになります。人がついてこなくなるからです。藤嶋さんはじめ、御社の方々を見ていると、その「人を大切にする」という確固たる意志を感じます。
藤嶋 ありがたいお言葉です。私としてもその点は大事にしており、部下にも常々「本当の優しさとは何か」を問いかけています。
目先の聞こえの良いことだけを言って、注意も指導もしない。本人が「できている」と勘違いをしている間に、マネージャーが裏で火消しに走る。それは本人の成長機会を奪う「偽りの優しさ」ではないでしょうか。
それよりも、厳しくてもしっかりと指導し、その人がコンサルタントとして本当に成長できる方が、よほど「優しい」と考えています。
宮嶋氏 まさにその通りで、我々はそれを「フィードバック」として実施しています。ポジティブな点とネガティブな点の両方を的確に伝えることがその人の成長にとって大切です。
結局のところ、こうした「人」に対する根本的な考え方、価値観に深く共感できていることが、我々のパートナーシップの基盤にあるのだと思います。
ファームとしての成長、上場を目指して
藤嶋 最後に、今後の展望についてお聞かせください。
宮嶋氏 弊社は上場企業として、株主からも社会からも、継続的な成長を求められています。その期待に応え続けるためには、本日お話ししたような「信頼できる」パートナーとの連携をさらに深めていく必要があります。
御社もまた、上場を目指されています。
我々がこうしたパートナーシップを通じて事業を拡大し、お互いの社員により幅広い成長機会を提供していくことが、両社に興味を持つ方々に好意的に受け止められることを期待します。
御社とは今後も、単に事業を拡大するためだけでなく、共に「人財のインキュベーション」という社会的役割を担い、お互いが大切にすることを共有しながら、パートナーとして挑戦を続けていきたいと考えています。
藤嶋 御社のようなトップファームとの連携を拡大させていただくことは、我々の成長そのものです。弊社もパートナーシップの強化も含めてファームとしてさらに成長し、上場を目指していきます。
そして、業界全体の「人財のインキュベーション」を牽引する存在になる。その未来を確信しています。
本日は貴重なお話しありがとうございました!
宮嶋氏 ありがとうございました!
