
本記事のサマリ
この度、WorkXはパーソルワークススイッチコンサルティング株式会社(以下、パーソルワークススイッチコンサルティング)の代表小野氏をお招きし、WorkX代表の東野と地方創生・地域DXについての対談を行いました。 (対談実施日:2025年10月15日)
プロフィール

パーソルワークスイッチコンサルティング株式会社 代表取締役社長
小野 隆正氏
芝浦工業大学電子工学科卒業後、通信建設会社で現場監督や通信開発エンジニアを経験。起業を経て、海外拠点で通信開発系コンサルティングやプロジェクトマネジメントを担当。
2004年に株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に入社し、外資系通信会社で常駐エンジニアなどを経験。その後、パーソルプロセス&テクノロジー株式会社(現:パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社)にて、ITアウトソーシング部門統括部長やコンサルティング事業責任者、執行役員などを歴任。2023年10月、同社から分社化したパーソルワークスイッチコンサルティング株式会社の代表取締役社長に就任し、現在に至る。

株式会社WorkX 代表取締役CEO
東野 智晴
1984年静岡県生まれ。慶應義塾大学大学院卒業後、2009年東京海上日動に入社。ベイカレント・コンサルティングを経て、働き方への課題感から2018年に株式会社WorkXを設立。
地方創生・地域DXの取り組み方向性
東野 それでは早速テーマに入っていきます。本日は「地域創生・地域DX」について伺えればと思います。
御社は「地方創生テレワーク推進運動Action宣言」をされているように、地方創生に注力されておりますが、どのようなお取り組みをされているのでしょうか。
小野氏 この宣言にはパーソルグループとして取り組んでいます。コロナ禍でのテレワーク推進が起点となった取り組みで、地方の方々へもっとはたらく場を提供しよう、雇用を創出しようという内容です。
当社は元々コロナ禍以前よりテレワークでのはたらき方がベースでしたので、テレワークに関するノウハウは当社から積極的に提供しながら、グループ全体で取り組んでいる形です。
東野 グループとして取り組まれているのですね。どのような形で地域と関わることが多いでしょうか。
小野氏 各地域には、しっかりと利益を上げている素晴らしい企業がたくさん存在しています。ただし、そこにコンサルティングファームが支援しているケースは少なく、情報が多く出回っていない状況です。
企業の方ももちろん情報収集はしていただいていますが、実際に会って最新事例などの話をすると、それは知らなかったというリアクションが多いです。そのため、当社としてはしっかりと現地に赴いて、膝を突き合わせて地域の方とお話しした上での課題解決のご支援、主にDX推進を行っております。
また、それは民間企業に限らず、地方自治体へのDX推進も支援しています。
「思い入れ」が成功の要諦
東野 地方創生プロジェクトを成功させるために、その他のプロジェクトと比べて特に意識されているポイントはありますか。
小野氏 自治体側の協力は不可欠と考えています。それは金銭面だけでなく、自治体として「これに注力する」という宣言も含めた動機付け、モメンタムを作るという側面です。
特に我々のような企業が支援する場合、リモートでのやりとりとなってしまうと現場の温度感など深いところまでのすり合わせができず、上辺のコミュニケーションになってしまいます。なので、やはり現地に赴いて、はたらき手と自治体と我々のような企業が三位一体となって取り組む、という点が大事だと考えています。
また、地域に思い入れがある人間が行かないと、この手の話は進まないという側面もあると思います。もちろん自治体やはたらき手は現地の方々なので思い入れはあるため、支援する側がより大きな思い入れを持って取り組めるかが重要です。
東野 地域に対するゆかり・縁というイメージでしょうか。
小野氏 もちろんそれもあります。例えば当社にて九州地域でのご支援案件があるのですが、それは九州出身のメンバーが「自分の地元を助けたい」という想いを持って推進しています。そもそもコンサルタントのモチベーションは「どこかの誰かを助けたい」というものだと思っていて、その内の「自分の故郷を助けたい」という想いが良いモチベーションになるのだと考えています。たとえ出身地でなくとも、そのレベルでの思い入れが重要です。
東野 地方創生だけでなく、どんなプロジェクト・仕事でも、思い入れを持った人には勝てませんよね。責任感が違います。
東野 逆に、地域創生の取り組みでの注意点、押さえておくべきポイントはありますか?
小野氏 特に自治体は、制約事項が多いという点をまずは押さえておくべきです。市町村で言うと、まず上には都道府県がいて、さらに都道府県の上には国がいるという構造になっています。
影響として、たとえば「この道路は国のものだから手を出せない」といったケースもあり、取り組みを進める前に様々なステークホルダーと調整しながら進めていくため、そこのリードタイムを考慮した計画が必要です。
東野 スタートアップを経営していると、そこのスピード感の違いはかなり感じます。全然違う難易度がありますよね。他に留意点はありますでしょうか?
小野氏 もう一点、自治体は民間企業と違い、利益を上げることが評価されるわけではない、というポイントも重要です。
では、何がDXのモチベーションかというと、ひとつは人手不足でDXせざるを得ない、お尻に火がついているから、という自治体も多くあります。一方で、DXすると業務が変わり、キャッチアップすることも増えます。そんな中で前向きなモチベーションは何かと問われると、正直今までは口をつぐんでしまっていたと思います。我々民間企業のように、うまくいけばリターンがあって皆の給料上げられる、などの還元を自治体はできないのです。
ただし、最近は変化を感じています。自治体の方々を実際に見ていると、DXなどの推進メンバーに民間企業出身の方がいたり、キャッチアップの大変さよりもデジタル化の便利さ・スキルを付けることの面白さを納得して前向きに取り掛かる姿勢の方がいたり、良い変化が起こっています。
今後の取り組み:はたらく場をつくる
東野 御社の取り組みで、今後もし考えてらっしゃることがあればお聞かせください。
小野氏 地方にコールセンター/コンタクトセンターを作ることなどを通して、雇用の創出は引き続き行っていきたいです。首都圏は密になっていて、満員電車での通勤で疲弊している方も多いです。そのような課題の解決という意味も込めて、地方にはたらく場を作り、地方だからこそできるものが何かを考えられたらいいなと思っています。
東野 たしかに、ベッドタウンなどはまさにそのような状況になっていますよね。一極集中が止まらないです。
小野氏 一方で、民族大移動のような動きは避けるべきと考えています。移動しては焼け野原を作り、また移動して・・・の繰り返しになってしまいます。なので、色々な地域に広く住むように、場所を提供していく、そのお手伝いが少しでもできればいいなと思っています。
WorkXへの期待:思い入れを持った方の紹介
東野 地方創生において、当社への今後の期待を伺いたいです。
小野氏 先ほど申し上げたように、地方創生では「思い入れ」がすごく重要です。なので、各地域で“我こそは”という思い入れを持った方々をご紹介いただきたいです。その方にリーダーシップを発揮していただき、当社のノウハウや実績と組み合わせることで、一緒に地域を盛り上げていきたいと考えています。
東野 その点はお力になれると考えています。弊社の人材プラットフォーム「ProConnect」には、7,000名のハイクラスなフリーランスコンサルタントの方々にご登録いただいているので、全国各地出身の方、在住の方も多いです。
実際に、現在進行形の御社の地域DX案件にも、その地域にゆかりのある弊社フリーランスの方にてご支援させていただいています。
あとは、大手のコンサルティングファームにてバリバリやっていた方が、一定やり切ったので地方に移住して、リモート案件や地場の案件をこなしている方も増えてきています。
小野氏 そうですよね。あとは、まだ具体的なアイデアがあるわけではないですが、地方ならではの仕事とフリーランスならではのはたらき方を組み合わせることで、両社で何か世の中に対して「こういうはたらき方あるんだ」「こういう仕事があるんだ」という提言的な取り組みをリードできれば面白いなと思います。
フリーランスの方の特徴やモチベーションなどを尊重した上で、かつ、地方特有の仕事で、地域の発展にもつながるというようなWin-Winの形ができればすごくいいなと思いますね。
東野 面白そうですね、ぜひまた議論させてください。本日はありがとうございました!
小野氏 ありがとうございました!
